夕方の保育園の事務室で、退職の申し出を受けた書類とシフト表を前に、これから始まる採用の段取りを考えている事務担当者

保育園の求人・採用|応募受付から内定・入職準備までの事務

夕方、子どもたちが帰ったあとの事務室で、園長から小さな声で言われる。「◯◯先生、来月いっぱいで辞めることになって」。

その瞬間、頭の中に一気にいろいろなことが浮かびます。来月のシフトはどうなるんだろう。配置基準は足りるんだろうか。求人はどこに出せばいいんだっけ。前に採用したのはいつだったか。しかも保育の現場は、探せばすぐ見つかるという状況ではありません。「うちに来てくれる人、いるのかな」と心細くなりますよね。

そういうときこそ、あわてて求人を出すより、先に手元を整えたほうが結果的に早く進みます。今日は、求人を出す前に決めておくことから、応募・面接・内定を経て入職の日を迎えるまでを、事務の目線で一緒に並べていきましょう。

結論:採用の事務は、求人を出す前に3つ決めておくと、そのあとが驚くほど楽になります。①いつまでに・何人・どの雇用形態か(正規かパートか、資格が必要か)、②勤務条件の中身(勤務時間、賃金、手当、休日、業務内容と変更の範囲)、③選考の担当と日程(誰が面接し、いつなら空いているか)。この3つが決まっていないまま求人を出すと、応募が来てから園の中で相談することになり、返事が遅れて辞退につながります。採用でいちばん効くのは、条件のよさより「連絡の速さ」です。

保育の採用は、応募が来ないことだけが悩みではありません。せっかく応募してくれた人に、こちらの返事が遅れて逃してしまうことのほうが、実はもったいない。応募者は複数の園に同時に申し込んでいることが多く、先に日程を出した園から順に面接が埋まっていきます。

だからこの記事では、「応募が来たときに、その日のうちに動ける状態」をつくることを目標にします。

何が起きているか

保育園の採用事務は、大きく3つのまとまりに分かれます。まずは全体像を見てから、それぞれの中身に入っていきます。

採用の事務を「募集」「選考」「内定」の三つのまとまりに分けて示した図
採用の事務は募集・選考・内定の3つに分けると、いまどこにいるかが見えて、やることが絞れます。

このうち、事務が主に担うのは募集の書類づくりと選考の連絡まわり、そして内定後の手続きです。面接そのものは園長・主任が担当する園が多いと思いますが、日程を押さえて、応募者に連絡して、結果を伝えるところは事務の仕事になりがちです。

そしてもうひとつ、忘れやすいのが配置基準との関係です。誰がいつ抜けて、いつから新しい人が入るのか。その空白期間に必要な人数を満たせるかどうかは、採用の急ぎ具合を決める材料になります。まず来月・再来月の必要人数を確認するところから始めると、「いつまでに」がはっきりします。

手順1:募集の条件を1枚にまとめる

求人を出す前に、条件を1枚の紙にまとめます。ゼロから考える必要はありません。労働条件通知書に書く項目をそのまま使うのがいちばん早い方法です。

書き出す項目は、次のとおりです。

  1. 雇用形態と契約期間:正規職員か、有期契約か、パートか。有期なら期間と、更新の有無・更新の上限
  2. 業務内容:クラス担任、保育補助、フリー、調理、事務など。あわせて将来変わりうる範囲(例:担任からフリーへの変更がありうる、など)
  3. 就業場所:園名と住所。あわせて将来変わりうる範囲(系列園への異動がありうるか)
  4. 勤務時間:始業・終業、シフトの種類(早番・遅番の時間帯)、休憩、時間外の有無
  5. 休日・休暇:週休、年末年始、有給休暇の付与
  6. 賃金:基本給または時給、諸手当(処遇改善の手当、通勤手当、資格手当など)、締め日と支払日、昇給・賞与
  7. 社会保険・雇用保険:加入の有無(勤務時間によって変わります)

3と2の「変更の範囲」は、2024年4月から労働条件の明示ルールに加わった項目です。有期契約の場合は、これに加えて更新の上限の有無、そして無期転換の申込みができるタイミングでは申込機会と転換後の条件の明示も必要になります。求人票の段階でここまで書ききれなくても、入職時の労働条件通知書には必ず入る項目なので、募集の段階で園の中の考えを決めておくと後がスムーズです。

もうひとつ、賃金の欄で気をつけたいのが最低賃金です。地域別最低賃金は毎年秋に改定されるのが通例で、この時期に出す求人は、掲載期間の途中で改定日をまたぐことがあります。改定後の額を下回らないか、募集時給を決める前に一度確認しておくと安心です。

求人票に書いた条件と、実際に働いてもらう条件が違ってしまうのは避けたいところです。もし変わる場合は、面接や内定の場で変わった点をはっきり伝える必要があります(職業安定法上のルールでもあります)。「募集のときは9時〜18時と書いたが、実際は早番もある」といったズレは、入職後のすれ違いのもとになります。

手順2:求人の出し先を選ぶ

出し先は一つに絞らず、園の状況に合わせて組み合わせます。それぞれ費用と手間が違います。

人材紹介や有料媒体を使うときは、その費用を園の会計上どの費目で扱うか、補助や委託費の対象になるかを先に確認しておくと安心です。ここは自治体や要綱によって扱いが分かれるところなので、迷ったら契約前に窓口へ聞くのが確実です。あとから「この支出は対象外です」となると、園の持ち出しが決まってしまいます。

また、資格を持つ人にこだわりすぎないのもひとつの考え方です。保育補助や子育て支援員として働ける人を募集し、園として資格取得を応援する形にすると、応募の幅が広がります。もちろん、配置基準に算入できる人数との関係は確認が必要です。

手順3:応募が来たら、その日のうちに返す

ここが、採用の成否を分けるところです。

応募の連絡が入ったら、まず受け付けたことを伝えます。選考の結果ではなく、「届きました」「いつごろ連絡します」を伝えるだけで、応募者の不安は大きく減ります。

受付の返信文例(メール・応募フォームの自動返信)

◯◯様

このたびは、◯◯保育園の求人にご応募いただき、ありがとうございます。
応募書類を確かに拝受いたしました。

選考のうえ、◯月◯日ごろまでに、面接のご案内または結果をご連絡いたします。
ご質問やご都合の悪い日などがありましたら、お気軽にお知らせください。

◯◯保育園 採用担当 ◯◯
電話 ◯◯◯-◯◯◯-◯◯◯◯(平日 ◯時〜◯時)

日程調整の文例

このたびは、ご応募ありがとうございます。
面接のご案内をさせていただきたく、下記の候補日をお送りします。

・◯月◯日(◯)◯時〜
・◯月◯日(◯)◯時〜
・◯月◯日(◯)◯時〜

いずれもご都合が合わない場合は、ご希望の曜日・時間帯をお知らせください。
当日は、保育士証(お持ちの方)と、ご記入いただいた履歴書をご持参ください。
所要時間は◯分程度、園内をご覧いただく時間も設けています。

候補日は3つ以上出すのがコツです。1つだけ提示して「難しいです」と返ってくると、往復が増えて数日が過ぎてしまいます。園長の予定が押さえにくいなら、あらかじめ「面接に使える枠」を毎週決めておくと、事務の判断だけで日程を出せます。

在職中の人が応募してくることも多いので、夕方以降や土曜の枠を1つ持っておくと、応募のとりこぼしが減ります。

手順4:面接で聞くこと、聞かないこと

面接そのものは事務の担当でなくても、聞いてはいけないことの共有は事務から働きかけておきたいところです。悪気なく雑談のつもりで聞いてしまい、あとで問題になることがあります。

採用選考は「応募者の適性・能力」に基づいて行うのが原則で、本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項は、選考の判断材料にしないこととされています(厚生労働省が示す公正な採用選考の考え方)。

避けたい質問

聞いてよいこと(確認したいこと)

「お子さんの預け先は?」も、聞き方によっては家庭環境への立ち入りになります。勤務の可否を確認したいのであれば、「早番のある週に勤務できますか」と、勤務条件そのものを聞く形に置き換えれば十分です。

面接では、園側から伝えることも大切です。シフトの実態、行事の忙しい時期、持ち帰り仕事の有無。良いところだけを伝えて入職後にギャップが生まれるより、正直に伝えたうえで来てくれた人のほうが、結果として長く働いてくれます。

手順5:結果を伝える。不採用の連絡も、決めた期日に

採否が決まったら、採用・不採用のどちらも、伝えると約束した期日までに連絡します。不採用の連絡は気が重い仕事ですが、応募者は次の予定を組めずに待っています。連絡が来ないまま終わることが、いちばんつらい。

採用(内定)の連絡文例

このたびは、◯◯保育園の採用選考にご応募いただき、ありがとうございました。
選考の結果、ぜひ当園でご一緒に働いていただきたく、採用を決定いたしました。

つきましては、内定通知書と労働条件通知書をお送りします。内容をご確認のうえ、◯月◯日ごろまでにお返事をいただけますと幸いです。
ご不明な点がありましたら、遠慮なくお問い合わせください。

不採用の連絡文例

このたびは、◯◯保育園の採用選考にご応募いただき、ありがとうございました。
慎重に選考いたしました結果、誠に残念ながら、今回はご期待に沿えない結果となりました。

ご応募いただいた書類は、当園の責任において適切に処分いたします(ご希望があればご返却いたします)。
◯◯様の今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

不採用の理由は、原則として書きません。書くと説明を求められ、対応が長引くことがあります。それより、応募書類をどう扱うかを必ず伝えます。採用選考のために預かった個人情報は、その目的の範囲で使い、選考が終わったら返却するか、責任をもって廃棄する。園の中で「不採用の書類は◯か月保管して裁断」といったルールを決めて、書類の置き場所も分けておくと安心です。

なお、地域の保育の世界は思っているより狭く、応募者は将来の同僚や取引先になることもあります。丁寧な断り方は、園の評判をそのまま形づくります。

手順6:内定から入職の日まで

内定の返事をもらったら、入職日までにやることを並べます。ここは事務の出番です。

  1. 労働条件通知書を交わす:手順1で整理した項目を、書面で明示します(本人が希望すれば電子メール等での明示も可能です)。募集時の条件から変わった点があれば、はっきり示します
  2. 提出書類を依頼する:マイナンバーと本人確認書類、給与振込口座、扶養控除等申告書、年途中入職なら前職の源泉徴収票、雇用保険被保険者証(前職がある場合)、健康診断書(園の規程による)など。一覧にして渡すと、当日に足りないものが出にくくなります
  3. 資格を確認する:保育士として配置する人は、保育士証(保育士登録証)の原本を確認し、写しを保管します。結婚などで氏名が変わっている場合は書換え交付の手続きが必要なので、早めに声をかけます。調理員なら食品衛生や検便の扱いも確認します
  4. 社会保険・雇用保険の手続きにつなぐ:勤務時間によって加入の要否が変わります。期限の短い手続きがあるので、入職日が決まった時点で準備を始めます
  5. 園内の登録をすませる:シフト表、名簿、給与計算、登降園や連絡アプリのアカウント、ロッカー・エプロン・名札の準備
  6. 初日の受け入れを決める:誰が案内するか、何時にどこへ来てもらうか、初日に読んでもらう資料は何か。ここが決まっていないと、初日に本人が手持ち無沙汰になります

また、子どもと接する仕事の採用では、犯罪歴の確認に関する新しい仕組み(いわゆる日本版DBS。2024年に成立したこども性暴力防止法にもとづくもの)の準備が進んでいます。認可保育所は対象に含まれる見込みで、確認の手順や開始時期は本記事の執筆時点でも順次示されている段階です。こども家庭庁や自治体からの案内を、採用のたびに最新のもので確認するようにしておくと、始まったときに慌てずにすみます。

明日やること

全部を一度に整えなくて大丈夫です。明日は、次のどれか一つで十分です。

確認チェックリスト

募集の前に決める

選考の段取り

内定から入職まで

個人情報の扱い

新しく入職した職員を迎え、園の玄関で笑顔で挨拶を交わしている保育園の事務担当者

採用は、うまくいくかどうかを園だけで決められない仕事です。応募が来ない時期もあれば、内定を辞退されることもあります。だからこそ、自分たちで決められるところ——条件を先に固めておく、返事を早く返す、丁寧に断る——を整えておくことに意味があります。

そしてもうひとつ。求人票を出して、面接の日程を押さえて、書類をそろえて初日を迎える準備をする。その一つひとつは、新しく入る誰かが安心して働きはじめるための下ごしらえです。表には出にくい仕事ですが、初日に「準備してもらえていた」と感じられるかどうかは、その人が園に残るかどうかを静かに左右します。

今日は、来月の必要人数を数えるところまでで十分です。人を迎える準備を始めているというだけで、園の明日はもう少し前に進んでいます。

よければ、こちらも

人が入る・抜けるまわりの事務を、もう少し整えたいときに。

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