事務室で研修の案内と職員のシフト表を並べ、この日は勤務扱いになるだろうかと考え込んでいる保育園の事務担当者

保育園の研修時間は勤務扱い?労働時間の考え方と記録の残し方

「来月のキャリアアップ研修、あれって勤務扱いでいいんですよね?」

職員室でそう聞かれて、「たぶん、そうだと思う」と答えたあと、なんとなく落ち着かない気持ちが残った——そんな経験、ありませんか。

研修の日は、シフトから一人抜けます。その穴をどう埋めるかで頭がいっぱいになって、「その時間を給与でどう扱うか」は後回しになりがちです。しかも園によって、これまでの扱いがばらばらだったりします。前任者から引き継いだやり方が本当に正しいのか、確かめる機会もないままここまで来た、という園も多いと思います。

でも、この判断は職員の給与に直接関わります。だからこそ、園として一度だけ整理しておくと、そのあとが本当に楽になります。

結論:分かれ道はひとつだけです。その研修に「園が行ってほしい」と言ったのか、職員が自分の意思で申し込んだのか。園が受講を求めたもの(=園が指示)なら、参加時間は労働時間として扱うのが原則です。反対に、参加も不参加も職員の自由で、行かなくても不利益がない(=自由参加)なら、労働時間には当たりません。まずは直近の研修がどちらだったかを、1件ずつ振り分けるところから始めましょう。

一度に全部を整えなくて大丈夫です。今ある研修を仕分けるだけで、次に迷う回数はぐっと減ります。

判断の軸は「園が指示したかどうか」ひとつ

労働時間かどうかは、職員が園の指揮命令のもとに置かれていたかで決まります。むずかしく聞こえますが、現場の言葉に置きかえるとこうです。

その研修、園が「行ってください」と言いましたか?

参加しないことに園として困る事情があるなら、それは園が求めた研修です。逆に、「興味があれば、どうぞ」で、行かなくても評価や仕事に何も影響しないなら、自由参加の研修です。

研修が勤務扱いになるかの分かれ道を示した図。左は園長が職員に研修の受講を指示している場面、右は職員が自分で見つけた研修に自由に申し込んでいる場面
分かれ道はひとつ。園が受講を指示したか、職員が自由に申し込んだか。左なら労働時間として扱います。

保育の現場でよくある研修を、この軸で並べてみます。

園が指示したもの(労働時間として扱うのが原則)

職員の自由参加のもの(労働時間には当たらない)

迷いやすいのは、その中間にあるものです。たとえば「参加は任意だけれど、園としてはできれば全員に受けてほしい」という研修。「任意です」と言いながら、実際には出席者を確認して未受講者に声をかけているなら、それは実質的に園が求めた研修として扱うほうが自然です。言い方ではなく、園の運用がどちらに近いかで見ます。

判断に迷ったときは、こう考えてみてください。その職員が「行きません」と言ったとき、園として困りますか? 困るなら、園が求めた研修です。

キャリアアップ研修は、原則として勤務扱いで考える

保育の現場でいちばん件数が多く、いちばん相談が多いのがここだと思います。

キャリアアップ研修は、処遇改善等加算Ⅱの要件と結びついています。園が「この人に副主任になってもらいたいから、この分野を受けてほしい」と考えて受講してもらうものなので、園の必要にもとづく受講にあたるのが通常です。だとすれば、その時間は労働時間として扱うのが筋になります。

受講料や交通費も、園が求めた研修であれば園(法人)が負担するのが自然な整理です。受講料が無料の研修でも、会場までの交通費や、オンライン受講のための通信環境は職員の持ち出しになりがちなので、園として決めておくと親切です。

研修・役職・手当のつながりについては キャリアアップ研修と処遇改善加算Ⅱの要件を結びつける手順 に整理しています。加算そのものの違いは 処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの違いを整理する手順 をご覧ください。

迷いやすい4つの場面

1. 休みの日に研修があるとき

これがいちばん多い悩みだと思います。研修は平日の日中に組まれることが多いのですが、シフトの都合でその日が非番だった、あるいは土曜に設定されている、ということが起こります。

考え方は2つです。

実務としては、前もって振替を組むほうが、給与計算も職員の生活も落ち着きます。研修の案内が来た時点で、シフトを作る人と一緒に振替日まで決めてしまうのがおすすめです。時間外・休日労働の考え方は 保育園の36協定と残業時間の管理、まず押さえる基本 にまとめています。

なお、「有給休暇を使って研修に行く」という扱いにしている園を見かけることがありますが、園が求めた研修に、職員の有給を充てるのは避けたい形です。有給は職員が自由に使える休みなので、園の必要で使ってもらうものではありません。年5日の取得管理とあわせて 保育園の有給管理、年5日取得をシフトに組み込む手順 も参考になると思います。

2. 会場までの移動時間

研修会場が遠いと、移動だけで往復2時間かかることもあります。

一般的な整理としては、自宅から会場への移動は通勤に近いものとして、労働時間には含めない扱いが多いです。一方、いったん園に出勤してから会場へ移動する場合の移動時間や、園の用事(書類を届ける、他園の職員を乗せていく等)を兼ねている移動は、指揮命令下にあると見るのが自然です。

ここは判断が分かれやすいところなので、園として一度決めて、規程か内規に書いておくのがいちばんです。「移動時間は労働時間に含めないが、交通費は実費支給し、開始・終了時刻は研修の時間で記録する」といった形で構いません。決めごとがあれば、職員も納得しやすくなります。

3. オンライン研修・eラーニング

ここ数年で一気に増えました。自宅で夜に受講できるのは便利ですが、時間の把握がむずかしくなります。

園が受講を求めているなら、場所が自宅でも労働時間です。だから、いつ・何時間受講したかを記録に残す形を先に決めておきます。

「見えない時間」がいちばんしんどいので、ここは早めに形を作っておくと職員も安心します。

4. 研修後のレポート・復命書を書く時間

意外と見落とされるのがここです。研修そのものは勤務扱いにしていても、「感想文は各自で書いてきてね」となっていることがあります。

園が提出を求めている書類なら、それを書く時間も業務です。とはいえ、家で15分で書くほうが楽、という職員もいます。厳密に測るというより、そもそも枚数と項目を減らす方向で考えるのが現実的です。A4の半分、項目は「受講した分野/学んだこと/園でやってみたいこと」の3つで十分に足ります。

記録の残し方は、2種類あればいい

研修の記録は、労務のための記録と、保育のための記録の2つの役割があります。同じ研修を、目的の違う2か所に残すイメージです。

1. 出勤の記録(労務のため)

タイムカードや出勤簿に、研修の日をどう記すかです。「研修」であることが分かる印を残すのがコツです。

給与計算の締めのときに、区分が分かれていると確認がぐっと楽になります。締めから支給までの流れは 保育園の勤怠から給与計算まで、締め日から支給日までの流れ、打刻の切り替えは 登降園を打刻アプリに切り替えるときの移行手順 にまとめています。

2. 研修の記録(保育のため・監査のため)

こちらは「誰が・いつ・どの研修を受けたか」の一覧です。年度ごとに1枚あれば十分です。

項目書くこと
受講者氏名・職名
日時年月日・時間
研修名主催者と分野もあわせて
形式集合/オンライン/園内
修了証有無と保管場所
復命提出の有無

指導監査では、園として研修の機会を確保できているかという視点で見られることがあります。この一覧があると、「今年度は誰も研修に出ていない分野はどこか」も同時に見えるので、次の年度の計画づくりにもそのまま使えます。監査に向けた書類の揃え方は 指導監査で見られる書類、慌てず揃える準備の基本 をご覧ください。

修了証は、原本を職員に渡し、園にはコピーを1部残す形が扱いやすいです。加算の確認のときに探し回らずにすみます。職員の資格や登録の管理は 保育園の職員名簿と資格証|保育士登録の確認と氏名変更の進め方 にも整理しています。

園としてのルールは、A4半ページで足ります

規程を一から作り直す必要はありません。職員に説明できる短い決めごとがあれば十分です。たとえば、こんな形です。

【研修参加の取り扱い(案)】

1. 園が受講を求める研修は、勤務として取り扱います。
   (キャリアアップ研修、園内研修、法人・自治体から求められる研修 等)

2. 受講料および交通費は、園が負担します。

3. 所定休日に研修がある場合は、原則として事前に勤務日を振り替えます。
   振替日は、研修日より前に決めて本人に伝えます。

4. 会場までの移動時間は、通勤に準じるものとして取り扱います。
   (園に出勤してから会場へ移動する場合を除く)

5. オンライン研修は、原則として勤務時間内に受講します。
   やむを得ず時間外・自宅で受講する場合は、開始・終了時刻を申告してください。

6. 職員が自らの希望で参加する研修は、上記の取り扱いの対象外とします。
   (受講を希望する場合は、事前にご相談ください)

このまま使えるものではなく、園の実情に合わせて言葉を入れ替えるための下敷きとして見てください。決めたら、就業規則の本体か別規程のどちらに置くかを園長・法人と相談するところまでがワンセットです。就業規則を変えるときの手順と周知のしかたは 保育園の就業規則、作成・変更の手順と職員への周知のしかた にまとめています。

これまでの扱いと違っていたら

整理してみたら、「これまでの園のやり方と違うかもしれない」と気づくことがあります。

そのときに、自分ひとりで結論を出さないでください。過去の扱いをどうするか、いつから新しい扱いにするかは、園長・法人と相談して決めることです。前任者を責める話にもしないでほしいと思います。研修の位置づけは、キャリアアップ研修が広がるなかで少しずつ変わってきたもので、昔の扱いのまま来ている園はたくさんあります。

判断がむずかしいときは、労働基準監督署の相談窓口や、社会保険労務士に一度確認するのが確実です。「園が受講を求めた研修の時間の扱いについて確認したい」と伝えれば、話は早く進みます。相談したという事実そのものが、園として誠実に整えようとしている証拠にもなります。

明日やること

明日ひとつだけやるなら、今年度これまでに職員が参加した研修を、紙に書き出すことです。

日付と、氏名と、研修名だけで構いません。分かる範囲で大丈夫です。書き出したら、1件ずつ「これは園が指示したもの/自由参加のもの」に丸をつけていきます。

たいてい、10分ほどで終わります。そして、そのうち何件かで手が止まるはずです。その止まった1件が、園として決めるべきことが残っている場所です。全部を今日決めなくていいので、まずは「どこが決まっていないか」だけ見えれば十分です。

確認チェックリスト

研修は、園にとって職員が育つ大切な時間です。同時に、事務の側から見れば「シフトの穴」「給与の判断」「記録」の三つが一度にのしかかってくる、なかなか手ごわい仕事でもあります。その両方を引き受けているのが、あなたの席です。

研修から戻った職員を、事務室で明るく迎えている保育園の事務担当者

職員が学びに出かけられるのは、その日のシフトを誰かが組み直し、その時間の扱いを誰かが考えているからです。外からはほとんど見えない仕事ですが、園の育ちを支えているのは、まちがいなくその段取りのほうです。今日はまず、研修の一覧を1枚書き出すところからで大丈夫です。

よければ、こちらも

労務とシフトまわりの話を、いくつか置いています。

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