夕方の保育園の玄関で、お迎えに来た保護者の話を聞きながら、少し困った表情で朝の伝言を思い出そうとしている保育士

保育園の連絡ミスを防ぐ|保護者の伝言を記録と引き継ぎで届ける工夫

夕方、お迎えの時間。

「今朝、先生にお伝えしたんですけど……今日はおばあちゃんが迎えに来るって」

遅番の保育士が、え、と一瞬止まります。そんな話は聞いていない。朝に受けたのは早番の先生で、その先生はもう退勤しています。事務室に内線がかかってきて、あわてて連絡帳やメモを探す。伝言は、どこにも残っていませんでした。

幸い、保護者に電話で確かめて、その日は無事にお引き渡しができた。でも帰り道、「どうして伝わらなかったんだろう」と、胸のあたりが重いまま。そんな一日を過ごしたことがある方は、きっと少なくないと思います。

結論:伝言の行き違いは、誰かの不注意というより、伝言の「通り道」が決まっていないことから起きます。整えるのは3つです。①伝言を書く場所を園で1か所に決める/②書く型(誰の・誰から・何を・いつまで・受けた人)をそろえる/③交代のときに読む、対応したら「済」を入れる。口頭で受けた伝言も、この通り道に乗せれば、夕方の職員まで届きます。

ぜんぶ一度に変えなくて大丈夫です。まずは、伝言がどこで消えているのかから、一緒に見ていきましょう。

何が起きているか|保護者の伝言が消える3つの場所

保育園は、朝と夕方で職員が入れ替わる職場です。早番で受けた伝言を、遅番の職員が受け取る。受けた人と、対応する人が別の人になるのが、あたりまえの毎日です。

そのなかで、伝言が消えやすい場所は、だいたい3つに分かれます。

1. 口頭のまま、どこにも書かれない

朝の玄関は、子どもを受け入れながら、泣いている子をあやしながら、保護者と話す時間です。「わかりました」と答えたその場では覚えていても、次の子が来た瞬間に、頭の奥に押し出されてしまいます。

2. 書いたけれど、書いた人のところに残る

エプロンのポケットのメモ、自分のノート、手の甲。書いた本人は安心しているのに、その紙はほかの職員の目に入らない場所にあります。退勤と一緒に、伝言も園から帰ってしまいます。

3. 書いたけれど、誰も見ない

伝言ノートやホワイトボードはあるのに、「いつ・誰が見るか」が決まっていない。書く場所が、職員室のボード、連絡アプリの園内メモ、クラスのノートと何か所にも分かれていて、どこを見ればいいのか、職員のほうが迷っていることもあります。

こうして並べてみると、個人の努力で防げる部分はそれほど大きくありません。必要なのは、注意力よりも通り道です。

具体例|よくある伝言と、届け先

保護者から受ける伝言は、中身によって「誰に届けばいいか」「いつまでに届けばいいか」が違います。よくあるものを並べてみます。

よくある伝言届け先期限の目安
お迎えに来る人が変わる遅番の職員・担任お迎えの時刻まで
お迎えの時刻が変わる(早くなる・遅くなる)遅番の職員・担任その時刻まで
薬・体調のこと(朝に熱が少しあった等)担任・看護師(いれば)午前中
明日以降の欠席・早退の予定担任・事務(給食数)前日まで
提出物・持ち物のこと担任その日のうち
家庭の事情にかかわる相談園長・主任その日のうち

とくに気をつけたいのは、表の上の2つ(お迎えに来る人と時刻)です。これは「伝わらなかったね」で済ませにくい、子どもの安全にかかわる伝言です。

お迎えに来る人の変更は、園であらかじめ登録している人かどうかで対応が変わります。登録のない人が来られる場合の確認のしかたは、保育園で離婚・別居の相談を受けたら|連絡先と引き渡しの整理 にまとめています。

反対に、家庭の事情にかかわる相談は、詳しい中身を伝言欄に書かないほうが安心です。「◯◯ちゃんの保護者から相談あり。園長へ」とだけ書いて、中身は直接つなぎます。

放っておくと、どうなるか

伝言の行き違いが続くと、まず保護者の気持ちに小さな引っかかりが残ります。「言ったのに」「また伝わっていない」。ひとつひとつは小さくても、重なると「この園にちゃんと伝わるのかな」という不安に変わっていきます。

そして、もう一つ大きいのが、職員どうしの空気です。「朝に聞いたのは誰?」「聞いてないよ」。誰かを責めたいわけではないのに、確認のつもりの言葉がとがって聞こえてしまう。忙しい現場ほど、ここで疲れてしまいます。

通り道を決めることは、保護者のためであると同時に、職員が責め合わずにすむための仕組みでもあります。

手順を小さく分けます|伝言の引き継ぎは4つの順番で

保護者の伝言を「受ける」「書く」「確かめる」の3つの場面で届ける流れを示した図
受けた人が1か所に書き、交代した職員がそこを読んで確かめる。この通り道があれば、受けた人と対応する人が違っても伝言は届きます。

1. 伝言を書く場所を、園で1か所に決める

最初にやるのは、「保護者からの伝言は、ここに書く」という場所を1つに決めることです。

どちらでもかまいません。大事なのは、「ここを見れば全部ある」状態にすることです。クラスのノート、個人のメモ、チャット……と散らばっていると、見る側は結局どこも見ません。職員どうしの連絡手段の整え方は、保育園の職員間の情報共有|チャットで申し送りもれを減らす整え方 で詳しく書いています。

ホワイトボードを使う場合は、保護者や来客から見えない場所に置いてください。お子さんの名前と家庭の予定が並ぶので、玄関や廊下には向きません。

2. 書く型をそろえる

書く場所が決まったら、次は書き方です。人によって書き方が違うと、読む人が中身を取りちがえます。項目を5つに決めて、空欄を埋めるだけにしておくと、忙しい朝でも迷いません。

  1. 誰の(クラスと名前)
  2. 誰から(母・父・祖母など。電話か対面かも)
  3. 何を(「お迎え:祖母、17時ごろ」のように短く)
  4. いつまでに・誰に(「遅番・担任へ/17時まで」)
  5. 受けた人と時刻(「8:10 田中」)

5番目の「受けた人」は、責任を問うためではありません。あとで詳しく聞きたいとき、誰に聞けばいいかがわかるための欄です。そう職員に伝えておくと、書くことへの気おくれが減ります。

3. 受けたその場で、復唱する

伝言そのものの聞き違いを防ぐいちばん簡単な方法は、その場で短く言い返すことです。

「今日のお迎えは、おばあさまが17時ごろですね。承知しました。遅番の先生にもお伝えしておきますね」

この一言で、保護者は「伝わった」と安心できますし、聞き違いがあればその場で直せます。「遅番の先生にも伝えておきます」まで言えると、夕方に別の職員が対応しても、保護者は驚きません。

薬や体調のことは、口頭だけで受けず、連絡帳や所定の用紙に保護者自身に書いてもらう形にしている園も多いです。園のルールがあれば、それに沿って案内します。

4. 交代のときに読み、対応したら「済」を入れる

最後が、いちばん抜けやすいところです。書いてあっても、読まれなければ届きません。

「済」があると、読んだ人ではなく、対応した人がわかります。夕方に「あの伝言、どうなった?」と探し回る時間が、ぐっと減ります。

登降園の記録をアプリで取っている園なら、お迎え予定の変更をその画面にも反映できないか、一度見てみてください。記録の考え方は 登降園管理とは? にまとめています。

行き違いが起きてしまったとき

通り道を整えても、行き違いがゼロになるわけではありません。起きてしまったときは、次の順で落ち着いて向き合います。

  1. まず、保護者に謝る:「お伝えいただいていたのに、職員の間でつながっていませんでした。申し訳ありません」。言った・言わないの確認より先に、受け止めます。
  2. 子どもの安全を確かめる:お迎えの伝言なら、保護者本人に電話で確認してから引き渡します。
  3. その日のうちに、事実を書き残す:いつ・誰が受けて・どこで止まったか。誰かを責めるためではなく、通り道のどこに穴があったかを見るためです。
  4. 仕組みのほうを直す:「ボードを見るタイミングを1回増やす」など、小さく1つだけ。

一次対応の順番は 保護者の苦情、最初の一次対応で慌てないための順番、責めずに残す記録の書き方は 事故・ヒヤリハットの記録、責めずに次へつなげる残し方 が参考になります。

明日やること

明日ひとつだけやるなら、伝言メモの様式を1枚作って、職員室に置いてみることです。ボードの横に貼っても、ノートの最初のページに貼っても大丈夫です。

【保護者からの伝言】     月  日( )

┌──────────────────────────
│ 誰の  :   組 名前
│ 誰から :□母 □父 □祖父母 □その他(  )
│      □対面 □電話 □アプリ
│ 何を  :
│      (お迎え者/お迎え時刻/体調・薬/
│       欠席・早退/提出物/その他)
│ 届け先 :□遅番 □担任 □看護師 □事務 □園長
│ いつまで:  時  分まで
│ 受けた人:     (  時  分)
│ 対応済み:済  時  分 (    )
└──────────────────────────

置いたら、朝の打ち合わせで1分だけ「保護者からの伝言は、今日からここに書いてください」と伝えます。会議を開く必要はありません。1週間使ってみて、書きにくい欄があれば直す。それで十分です。

確認チェックリスト

夕方の保育園の玄関で、祖母に手を引かれて帰る子どもに、保育士が笑顔で手を振って見送っている場面
伝言がちゃんと届いた夕方は、見送る笑顔もいつもより少しやわらかくなります。

伝言の行き違いが起きると、つい「誰が聞いたの」と探したくなります。でも、朝の玄関で子どもを受け入れながら保護者の話を聞くのは、それだけで本当に大変な仕事です。聞き漏らしたのではなく、書く場所がなかっただけということのほうが、ずっと多いのだと思います。

伝言の通り道を作ることは、保護者の「伝わった」という安心と、職員の「責められない」という安心を、両方いっぺんに守る仕事です。事務の机から、園全体の空気を少しやわらかくできる。そういう仕事を、いま手に取ろうとしています。

まずは、様式を1枚。明日の朝、職員室に置くところから始めてみましょう。

よければ、こちらも

保護者・職員との連絡まわりの記事を、いくつか置いています。

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