
保育園の行事を中止・延期するとき|判断基準と当日朝の連絡文例
台風が近づいている週の、木曜の夜。
土曜の運動会をどうするか、まだ決まっていません。天気予報のアプリを何度も開いて、進路がほんの少し東に逸れるたびに、期待したり落ち込んだり。園長は「明日の朝、様子を見て決めましょう」と言っていて、その気持ちもわかります。でも事務室で気になっているのは、そこから先のことです。
決まったとして、誰に、いつ、どうやって伝えるのか。お弁当を作るご家庭は、何時までに知らせないと間に合わないのか。写真屋さんとテントの業者さんには、いつ連絡すればいいのか。
行事そのものより、「決まらないまま時間が過ぎること」がいちばんしんどい——そんな夜を過ごしたことがある方は、たぶん少なくないと思います。
結論:やることは3つです。①「こうなったら中止」という物差しを、行事の前に決めて紙に書く/②決める人と、決める時刻を決めておく/③連絡は一斉連絡+掲示の二段構えにする。当日の朝にやるのは「決める」ことではなく、決めてある基準に、今日の天気をあてはめるだけ。この形にできれば、朝の30分はぐっと静かになります。
今日ぜんぶ整えなくて大丈夫です。まずは基準の作り方から、一緒に見ていきましょう。
何が起きているか──朝に「決めよう」とするから重くなる
中止・延期の連絡が大変になるのは、連絡そのものが難しいからではありません。判断が終わっていないまま、連絡の時刻が来てしまうからです。
当日の朝、園にはこんなことが同時に起きています。
- 空を見ながら、実施か中止かを話し合っている
- 保護者からの問い合わせの電話が鳴り始める
- 職員は準備のために早く出てきていて、動き出していいのか待っている
- 業者・カメラマン・来賓に、まだ何も伝えられていない
この状態で「どうしましょうか」と相談を始めると、判断に15分、連絡文の作成に15分かかります。その30分のあいだにも電話は鳴り続けて、判断より先に対応に追われることになります。
反対に、前の週に「雨量がこれくらいなら中止」「暑さ指数がこの値を超えたら屋外は中止」と決めてあれば、朝にやるのは確認だけです。あとは、用意しておいた文面の空欄を埋めて送る。ここまで持っていけると、同じ雨の朝でも、園の中の空気がまったく違ってきます。

まず、物差しを紙に書く
「その時の状況で総合的に判断」は、いちばん決まらない決め方です。数字と言葉で書ける部分だけでも、先に決めておくと、当日の会話が短くなります。
園でよく使われている物差しを並べてみます。自園に合うものを2〜3個選べば十分です。
| 見るもの | 決めておく形の例 |
|---|---|
| 気象警報 | 午前6時の時点で暴風警報・大雨警報が出ていたら、屋外の行事は中止 |
| 避難情報 | 園の地域に高齢者等避難(警戒レベル3)以上が出ていたら中止 |
| 暑さ指数(WBGT) | 当日朝の予測で31以上なら、屋外の行事は中止または屋内に変更 |
| 園庭の状態 | 水たまりが引かず、ぬかるみで走れない状態なら屋外種目は中止 |
| 職員体制 | 当日の欠勤で保育に必要な人数を割る見込みなら、規模を縮小する |
| 気温(寒い時期) | 最高気温の予想が◯度を下回る場合は、屋外の時間を短縮する |
いくつか補足させてください。
気象警報について。 「注意報」ではなく「警報」を基準にしている園が多いです。休園の基準は自治体が示していることがあるので、行事の基準を作る前に、園としての休園基準がどうなっているかを一度確認しておくと、ちぐはぐになりません。
避難情報の呼び方について。 現在は「避難勧告」という区分はなく、警戒レベル3=高齢者等避難、レベル4=避難指示、レベル5=緊急安全確保という形に整理されています。園の要綱やおたよりの定型文に古い言葉が残っていることがあるので、この機会に見ておくと安心です。
暑さ指数(WBGT)について。 気温だけでなく湿度や日射も含めて暑さを表す指標で、環境省の熱中症予防情報サイトで地点ごとの予測が見られます。運動に関する指針では31以上で「運動は原則中止」、28以上で「厳重警戒」とされています。9月の運動会や、夏場の水遊びの判断に使いやすい数字です。プール・水遊びまわりの記録は プール・水遊びの安全管理記録|監査で見られるポイント にまとめています。
「中止」なのか「延期」なのか。 ここも先に決めておきたいところです。予備日があるなら「予備日に延期」、なければ「中止(後日、規模を縮小して園内で実施)」など、行事ごとに逃げ道を1本用意しておくと、保護者への説明がとても楽になります。
決める人と、決める時刻を決める
物差しの次に決めるのは、この2つだけです。
1. 決める人
「園長。不在時は主任」のように、その場にいる人で必ず決まる形にします。決裁を法人の本部に上げる園なら、当日の朝に連絡がつく方法(携帯番号など)まで含めて決めておきます。
2. 決める時刻
おすすめは、前日夕方と当日の朝の2回に分けるやり方です。
- 前日夕方(16時ごろ):翌日の予報を見て、「実施の見込み」「微妙」「中止の見込み」の3つのどれかを保護者に予告する
- 当日の朝(6時ごろ):最終判断をして、決まった時刻までに一斉連絡する
前日の予告があるだけで、保護者の負担はかなり変わります。お弁当の材料を買うか、洗濯物を干すか、祖父母に来てもらうか。「まだわからない」と伝えることも、立派な情報です。
そして当日の連絡時刻は、「◯時までに必ずお知らせします」と事前に伝えておくのが大切です。時刻が約束されていれば、保護者は待てます。約束がないと、6時台から電話が鳴り始めます。
朝の電話をどう受けるかについては、保育園の朝の欠席連絡|電話ラッシュを減らす受け方の切り替え手順 の考え方がそのまま使えます。
そのまま使える連絡文例
文面は、短く・結論から・迷わせないが基本です。長い前置きは、朝のスマホでは読まれません。
① 前日夕方に出す「予告」
【明日の運動会について(現時点のお知らせ)】
いつもご協力ありがとうございます。
明日◯月◯日の運動会について、現時点でのお知らせです。
現在の予報では、明日の午前中は雨の見込みです。
実施できるかどうかは、明日の朝6時30分までに
連絡アプリでお知らせします。
■ 実施する場合
・持ち物、集合時刻は事前のご案内のとおりです
■ 中止の場合
・◯月◯日(予備日)に延期します
・当日は通常保育となり、お弁当は不要です
ご準備の都合もあるかと存じますが、
直前のご案内となりますことをご了承ください。
◯◯保育園
② 当日の朝、中止(延期)を伝える
【本日の運動会は中止といたします】
本日◯月◯日の運動会は、雨天のため中止といたします。
◯月◯日(土)の予備日に延期します。
本日は【通常保育】です。
・登園時刻:いつもどおりです
・持ち物:いつもの持ち物でお願いします
・給食:園で用意します(お弁当は不要です)
楽しみにしてくださっていたところ、
申し訳ありません。予備日には元気に行いたいと思います。
◯◯保育園
③ 当日の朝、実施を伝える
【本日の運動会は予定どおり行います】
本日◯月◯日の運動会は、予定どおり実施します。
・開門 :◯時◯分
・開始 :◯時◯分
・持ち物 :レジャーシート、飲み物、お弁当、帽子
・足元がぬかるんでいる場所があります。
汚れてもよい靴でお越しください。
お気をつけてお越しください。
◯◯保育園
④ 途中で中断・打ち切りになったとき
【運動会の途中終了について】
本日の運動会は、雨が強くなったため
プログラム◯番までで終了とさせていただきました。
残りのプログラムは、後日、園内で行い
様子は写真と園だよりでお伝えします。
急な変更となり申し訳ありません。
お子さんが最後まで楽しんでいた様子を、
またお届けします。
◯◯保育園
文例を使うときのポイントを3つだけ。
- 件名(1行目)で結論を出す。「本日の運動会について」ではなく「本日の運動会は中止といたします」まで書きます。
- その日の保育がどうなるかを必ず書く。中止の連絡で保護者がいちばん知りたいのは、「今日は預けられるのか」「お弁当は要るのか」です。
- 謝りすぎない。天気は誰のせいでもありません。ひとこと添えるだけで十分で、そのぶん次への一文を置くほうが、読んだ側の気持ちは軽くなります。
おたより全般の文面の整え方は 保護者へのおたより、伝わる文面の整え方、行事の案内そのものは 行事の案内・出欠確認、伝わって集まる連絡文の作り方 にまとめています。
連絡は「一斉連絡+掲示」の二段構え
送ったつもりでも、届いていないことがあります。当日の朝は、次の順番で並べておくと抜けません。
1. 一斉連絡(連絡アプリ・一斉メール)
いちばん速い手段です。ただし、未読の家庭が必ず残ります。アプリなら送信後に既読の状況を見て、開いていない家庭にだけ声をかける形にすると、電話の本数を減らせます。
2. 園のホームページ・掲示
アプリを見られない保護者、通知に気づかない保護者のための逃げ道です。玄関の掲示は、すでに家を出てしまった保護者に効きます。
3. 個別の電話
未読が残った家庭、当日の登園予定がある家庭に絞ります。全世帯にかけようとすると朝が終わってしまうので、「かける対象を絞る」ところまでを事前に決めておくのがコツです。
手段そのものの備えは 保育園の災害・登園自粛の一斉連絡|届く手段を備える手順 に、アプリの導入や保護者への案内は 連絡アプリ導入の案内と同意|保護者にやさしく伝える手順と文例 にまとめています。
保護者以外にも、連絡先があります
意外と抜けやすいのが、園の外への連絡です。中止が決まった朝は、保護者への連絡でいっぱいになるので、先に一覧を作っておくと助かります。
- 写真業者・カメラマン
- テント・音響・機材のレンタル業者
- 会場(学校の体育館・公民館などを借りている場合)
- 給食業者(弁当や特別メニューを頼んでいる場合)
- 来賓、地域の方、招待した卒園児
- ボランティア、実習生
- バスの手配先
- 近隣(拡声器の使用予定を事前に伝えていた場合)
キャンセル料が発生する期限は業者ごとに違います。契約のときに「いつまでなら無料か」を控えておき、判断の時刻をその期限より前に設定すると、費用の面でも慌てずにすみます。
給食の食材は、当日の朝ではもう止められないことがほとんどです。中止の場合に給食をどうするか(通常提供に戻す、簡易な献立に切り替える等)を、調理室と先に相談しておいてください。
中止・延期のあとにやること
判断と連絡が終わったら、記録と後始末が残ります。あとで「どうしてこの日に中止したのか」を聞かれることがあるので、その日のうちに数行だけ残しておくと楽です。
残しておきたいのは、この5つくらいです。
- 判断した日時と、決めた人
- 判断の根拠(警報の有無、暑さ指数、園庭の状態など)
- 連絡した時刻と手段、未読への対応
- 業者・関係先への連絡状況
- 延期後の日程、または代替の実施内容
行事の写真販売や、他の子の写り込みへの配慮は 保育園の行事写真とSNS投稿|他の子の写り込みをお願いで防ぐ文例 を合わせて見てみてください。延期して人数が変わる場合は、出欠の取り直しが必要かどうかも早めに決めておきます。
なお、判断に納得できないというお声をいただくこともあります。そのときは、基準を先に決めていたことが助けになります。「その日の気分で決めたのではなく、こういう基準で判断しました」と説明できる形があると、話が落ち着きやすいです。一次対応の順番は 保護者の苦情、最初の一次対応で慌てないための順番 にまとめています。
明日やること
明日ひとつだけやるなら、次の行事の「中止基準メモ」を1枚だけ作ってみることです。10分あればできます。
【行事 中止・延期 判断メモ】
■ 行事名: 実施日: 月 日
■ 予備日: 月 日 / 予備日なし( 中止のみ )
■ 中止にする条件(2〜3個でよい)
□ 午前 時の時点で 警報が出ている
□ 暑さ指数(WBGT)の予測が 以上
□ 園庭の状態:
□ その他:
■ 決める人: (不在時: )
■ 決める時刻:前日夕方 時ごろ/当日の朝 時ごろ
■ 保護者へ連絡する時刻:当日 時 分まで
■ 連絡手段:□アプリ □メール □HP □玄関掲示 □電話
■ 保護者以外の連絡先(キャンセル期限)
・ ( 月 日まで無料)
・ ( 月 日まで無料)
■ 中止の場合の保育:□通常保育 □
■ 中止の場合の給食:□通常提供 □お弁当 □
書けたら、園長・主任に見てもらってください。会議を開く必要はありません。「この線でいいですか」と5分確認するだけで、当日の朝が変わります。
そして、決まったら行事の案内文に「中止の場合は◯時までにお知らせします」の一行を足しておく。この一行があるだけで、朝の電話は目に見えて減ります。
確認チェックリスト
- 園としての休園基準(自治体の基準を含む)を確認したか
- 行事ごとに、中止にする条件を2〜3個書き出したか
- 気象警報・避難情報の呼び方が、今の区分(高齢者等避難・避難指示・緊急安全確保)になっているか
- 屋外の行事に、暑さ指数(WBGT)の基準を入れたか
- 「中止」か「延期」か、行事ごとに逃げ道を決めたか
- 予備日を押さえているか(会場・業者の予約を含む)
- 決める人と、不在時に決める人を決めたか
- 前日夕方の予告と、当日の朝の最終判断の時刻を決めたか
- 保護者へ連絡する時刻を、案内文に書いて事前に伝えたか
- 連絡文の下書き(中止・実施・途中終了)を用意してあるか
- 連絡文に「その日の保育・給食・持ち物」を書く形になっているか
- 一斉連絡の未読を確認する手順を決めたか
- 玄関掲示とホームページの更新を、担当者に割り当てたか
- 保護者以外の連絡先一覧(業者・会場・来賓)を作ったか
- 業者のキャンセル無料期限を控え、判断時刻をその前に置いたか
- 中止時の給食の扱いを、調理室と相談してあるか
- 判断の根拠と連絡状況を、当日中に記録する場所を決めたか

行事の中止を決めるのは、いつでも気が重い仕事です。準備してきた職員のこと、楽しみにしていた子どものこと、仕事を休んで来る予定だった保護者のこと。全部が頭に浮かぶから、決めきれずに夜が長くなります。
でも、その迷いは、関わる人みんなのことを考えているから生まれるものです。基準を先に決めておくことは、迷いをなくすためではなく、迷う時間を短くして、そのぶんを子どもたちに戻すためのものだと思います。
一度に完璧な基準を作らなくて大丈夫です。次の行事のぶんだけ、紙1枚。それができたら、次の行事でまた1行だけ足していきましょう。雨の朝は、また来ます。そのときに少しでも早く動けるように、今のうちに、そっと備えておければ十分です。
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