
保育園の行事写真とSNS投稿|他の子の写り込みをお願いで防ぐ文例
運動会や発表会が終わった翌日か翌々日に、事務室の電話が鳴ることがあります。
「あの、うちの子が、ほかのお家のインスタに写っているみたいなんですけど……」
受話器を持ちながら、頭のなかで一気に整理が始まりますよね。誰が撮ったのか。どこに載っているのか。園はどこまで言えるのか。そもそも、園として何かお願いしていただろうか——。
行事の写真は、保護者にとって本当に大切なものです。撮った方に悪気があるわけでもありません。それでも、園には「うちの子の顔をネットに出したくない」と考えているご家庭も、事情があって居場所を知られたくないご家庭もあります。だから園は、この2つのあいだに立つことになります。
結論:うまくいっている園がやっているのは、この3つです。①園として「どこまではよくて、どこからは控えてほしいか」を先に決める。②その理由を添えて、行事の前にもう一度伝える。③起きたときに誰がどう動くかを決めておく。禁止のはり紙を増やすより、この3つのほうがずっと効きます。
そして大事なのは、これは保護者を疑う話ではないということです。ほとんどの方は、言われれば「あ、そうか」と気づいてくださいます。伝えていないことは、守りようがないだけなんです。
何が起きているのか
まず、現場で実際に起きていることを並べてみます。責める話ではなく、構造の話として見てください。
1. 悪気がないまま、ほかの子が一緒に写る
わが子を撮ったつもりでも、かけっこの写真には隣の子が写ります。集合写真ならなおさらです。撮った方の意識は「わが子の記録」なので、ほかの子のことまでは、そもそも視界に入っていません。
2. 「鍵アカウントだから大丈夫」が通じないことがある
限られた友人にしか見えない設定でも、スクリーンショットは撮れます。悪意がなくても、「かわいい」と思った誰かがそのまま別の場所に貼ることがあります。設定でコントロールできるのは公開範囲までで、そこから先は追えません。
3. 事情があって、写ってはいけない子がいる
これがいちばん切実です。離婚や別居、DVなどの事情で、住んでいる地域を知られてはいけないご家庭があります。園の名前とわが子の顔が同時にネットにあることが、そのまま居場所の手がかりになってしまう。この場合、写り込みは「気持ちの問題」ではなく安全の問題になります。ご家庭ごとの事情の受け取り方は 離婚・別居時の引き渡しと連絡先、園が確認しておくこと にも整理しています。
4. 園が「お願い」を伝えたのは、入園のときだけ
しおりには書いてある。でも、読んだのは1年前や3年前です。書いてあることと、覚えていることは別です。ここは園の落ち度というより、ただ間隔が空いているだけの話だと思います。
園として決める3本の線
「SNS禁止」と一言で書くと、かえって守られません。保護者からすると「じゃあ、わが子の写真を祖父母に送るのもだめなの?」となって、線がぼやけるからです。
決めるのは、次の3つだけで足ります。
線1:撮影そのものは、どこまでよいか
多くの園は「保護者席から、わが子を撮るのはどうぞ」としています。制限をかけるのは、着替えやプール・水あそび、トイレの周辺など、場面のほうです。撮影自体を止めると行事の意味が薄れてしまうので、ここは広めでいいと思います。
線2:撮った写真を、どこまで出してよいか
ここが本題です。おすすめの線は、とてもシンプルです。
わが子だけが写っている写真は、ご自由にどうぞ。ほかのお子さんが写っているものは、ネットに載せるのは控えてください。
「SNS禁止」ではなく「ほかの子が写っているものは控えてください」。この言い方だと、保護者は自分の写真を見て自分で判断できます。判断できる基準を渡すことが、いちばんの近道です。

線3:職員が写っているものは、どうするか
見落とされがちですが、職員にも同じ話があります。保育士も一人の働く人で、顔をネットに出されたくない人はいます。「お子さんと職員が一緒に写っているものも、ネットへの掲載は控えてください」と一行入れておくと、職員が安心して行事に立てます。
この3本を決めたら、入園のしおり(重要事項説明書)に載せる文言も、そこに合わせて直しておくと一貫します。しおりの見直しどきについては 重要事項説明書と入園のしおりを見直すときの確認項目 にまとめています。
伝えるのは、3回に分ける
一度にたくさん伝えるより、薄く3回のほうが届きます。同じことを、場所を変えて言うだけです。
1回目:入園時(しおり・同意書)
ここは「園の考え方」を置く場所です。あとで参照できる形にしておきます。園がホームページや園だよりに写真を使うときの同意は、これとは別に確認します。用途ごとの同意の取り方は 写真販売と肖像権、保護者への同意確認をていねいに進める手順 に整理しています。
しおり用の文例
【写真・動画の撮影とインターネットへの掲載について】
行事でのお子さんの撮影は、どうぞご自由になさってください。
たいせつな一日を、ぜひ記録に残していただければと思います。
そのうえで、ひとつだけお願いがあります。
撮影された写真・動画のうち、お子さん本人以外のお子さんや職員が
写っているものは、SNS・ブログ・動画サイトなど、インターネット上への
掲載をお控えください。
園には、さまざまなご事情から、お子さんの写真がインターネット上に
出ることを避けたいご家庭があります。ご家族だけでお楽しみいただく分には
制限はありません。ご理解をいただけますと幸いです。
2回目:行事の案内文(開催の1〜2週間前)
案内の末尾に3〜4行だけ添えます。長い注意書きは読まれないので、ここは短く。行事案内そのものの組み立ては 行事の案内と出欠確認、伝わる連絡文の組み立て方 を参考にしてください。
行事案内に添える文例
<写真・動画についてのお願い>
当日の撮影は、保護者席からご自由にどうぞ。
ほかのお子さんや職員が写っているものについては、SNSなど
インターネットへの掲載をお控えいただけますようお願いいたします。
ご家庭内での共有は問題ありません。
3回目:当日、会場で一言
いちばん効くのがこれです。開会の前のアナウンスに、10秒だけ入れます。
当日アナウンスの文例
本日はご来園ありがとうございます。
撮影はご自由にどうぞ。ひとつだけ、ほかのお子さんが写った写真は
SNSへの掲載をお控えいただきますよう、お願いいたします。
それでは、どうぞお子さんの姿をゆっくりご覧ください。
「禁止です」ではなく「お願いいたします」で終える。この語尾の差が、当日の空気をずいぶん変えます。おたよりや案内文の言い回しを整えるときは おたよりの文例と書き方の基本 もあわせてどうぞ。
それでも起きてしまった日の動き方
伝えていても、起きるときは起きます。そのときに慌てないよう、順番だけ決めておきます。
1. 受けた人が、その場で判断しない
「削除させます」も「園は関係ありません」も、その場で言わないでおきます。事務職員ひとりで背負う話ではありません。まず聞き取って、園長に上げる。ここまでが最初の役割です。一次対応の型は 保護者からの苦情、一次対応で決めておくこと にまとめています。
2. 事実を確認する(見に行かない、という選択もある)
どの行事の写真か、どんな内容か、投稿を見た方が誰かを、落ち着いて聞き取ります。園が投稿先のアカウントを特定しにいく必要はありません。園が探偵役をやり始めると、話がこじれます。
3. 個別に名指しせず、全体にもう一度お願いする
多くの場合、これで収まります。「先日の行事の写真について、あらためてお願いです」という形で、翌日の連絡アプリやおたよりに1本流します。誰かを特定して責める形にしない。これが園としていちばん大事な線です。
全体への再周知の文例
先日の運動会では、たくさんのご協力をありがとうございました。
写真・動画について、あらためてお願いをさせてください。
ほかのお子さんや職員が写っているものは、SNSなどインターネット上への
掲載をお控えいただけますようお願いいたします。
すでに掲載されているものがございましたら、お手数ですが
ご確認をお願いできますと助かります。
ご家庭のご事情はさまざまです。園としては、どのご家庭も
安心して行事に参加していただける形にしたいと考えております。
どうぞよろしくお願いいたします。
4. 安全に関わるときだけ、個別に動く
住所を知られてはいけないご家庭が関わる場合は、話がまったく変わります。ここは園長・法人と、必要なら自治体の担当課とも相談して進める場面です。事務職員の判断で連絡を取りにいかないでください。抱え込まないことが、いちばん正しい対応です。
5. 記録を1行残す
いつ、誰から、どういう申し出があり、園として何をしたか。数行で構いません。同じ相談が次の年にも来たとき、この1行が助けになります。苦情や相談の記録の残し方は 園の苦情解決のしくみ、受付から記録までを整える にまとめています。
保護者から「園の写真はどうなの」と聞かれたら
ときどき、こう返ってくることがあります。「園はホームページに子どもの写真を載せていますよね」。
これはもっともな疑問なので、正面から答えられるようにしておきます。園の掲載は、あらかじめご家庭ごとに同意を確認したうえで、掲載してよい子だけを載せている——ここが違います。同意の管理表を持っていれば、この説明は自信を持ってできます。逆に言えば、この管理表が最新でないと、この説明はできません。
進級のたびに、同意の状況を1枚の表で確認しておくのがおすすめです。写真データそのものの保管ルールは 園の個人情報、保管と持ち出しのルールをそろえる を参考にしてください。
明日やること
明日ひとつだけやるなら、次の行事の案内文に、3〜4行のお願いを足すことです。
新しく作らなくて大丈夫です。この記事の「行事案内に添える文例」をそのまま貼って、園の言葉に少しだけ直せば終わります。5分で足ります。
そのうえで、余力があればもう一つ。開会のアナウンス原稿に、10秒の一文を書き足しておく。当日その紙を読む人が、あなたでなくても伝わるようにしておくことが目的です。
確認チェックリスト
- 「ほかの子・職員が写っているものは掲載を控える」という線を、園として決めたか
- 撮影そのものを止める場面(着替え・水あそび等)を決めてあるか
- 入園のしおり・重要事項説明書に、その文言が入っているか
- 次の行事の案内文に、3〜4行のお願いを入れたか
- 当日のアナウンス原稿に、10秒の一文を書き足したか
- 職員の顔についても、同じお願いを伝えているか
- 園のホームページ・園だよりへの掲載同意を、家庭ごとに一覧で管理しているか
- 掲載同意の一覧を、進級のタイミングで見直しているか
- 写真に写ってはいけない事情のあるご家庭を、園として把握しているか
- 申し出があったときに、誰が受けて誰に上げるかを決めてあるか
- 個別に名指しせず、全体に再周知する文例を用意してあるか
- 受けた相談を1行残す場所(記録簿・共有フォルダ)を決めてあるか
この話は、誰かが悪いという話ではありません。うれしくて撮った人と、写りたくない事情のある人が、同じ園庭にいるというだけのことです。そのあいだに立って、両方の気持ちが立つ言葉を探しているのが、いまのあなたの仕事です。

伝えたことは、たいてい守られます。守られなかったときも、伝えてあったという事実が、園を助けてくれます。今日は、次の行事の案内文に3行足すところからで十分です。
よければ、こちらも
保護者への伝え方まわりの記事を、いくつか置いています。
- 写真販売と肖像権、保護者への同意確認をていねいに進める手順
- 行事の案内と出欠確認、伝わる連絡文の組み立て方
- 重要事項説明書と入園のしおりを見直すときの確認項目
- 園の個人情報、保管と持ち出しのルールをそろえる