事務室で鳴り続ける電話の受話器を取りながら、机に広げたメモとカレンダーで見学の日程を確かめている保育園の事務担当者

保育園の園見学の予約をオンライン化する手順|電話対応を減らす

「すみません、来年度の入園を考えていて、見学は……」——受話器を置いた三分後に、また電話が鳴る。夏の終わりから秋にかけて、園見学の問い合わせが重なる時期がありますよね。保育室からは子どもたちの声、事務室では電話とメモ帳。園長先生の予定を確認して折り返す、と伝えたまま、気づけば夕方になっていた日もあるかもしれません。

見学の対応そのものは、園にとって大切な時間です。しんどいのは見学ではなく、日程が決まるまでの往復のほうです。今日はその往復を減らす方法を、電話をなくさずにできる範囲で、一緒に組み立てていきましょう。

結論:やることは3つです。①見学枠(曜日・時間・1枠の組数)を先に決めて公開する、②Webフォームで予約を受ける、③電話で受けたぶんも含めて予約を1つの一覧表に集める。大事なのは電話をゼロにすることではありません。受け口が電話でもフォームでも、行き先が1つになっていること。ここさえ整えば、折り返しの電話も、ダブルブッキングの不安も、かなり静かになります。

何が起きているか

園見学の対応が重く感じられるのは、事務のさばき方が悪いからではありません。電話という手段が、そもそも「その場で答えを出す」ことを求めてくるからです。

保護者から電話がかかってきた瞬間、園側は「いつなら空いているか」を即答したい。でも、園長・主任の予定、行事、健診、クラスの状況——確認しないと決められないことが多く、たいていは「折り返します」になります。ここで1件が2件分の手間になります。

しかも電話は、こちらの都合を選んでくれません。おたよりを作っている途中でも、請求の締めの日でも鳴ります。手を止めて、メモを取って、また戻る。この切り替えのコストが、実務では意外なほど大きいものです。

そしてもうひとつ。予約の情報がメモ帳と担当者の頭の中にしかない状態だと、その人が休んだ日に誰も答えられません。「明日、見学の方が来るんでしたっけ」と朝に慌てるのは、たいていこの形です。

つまり負担の正体は、見学の件数ではなく、①即答を求められること ②割り込みで発生すること ③情報が一か所にないことの3つ。オンライン化は、この3つをそれぞれ少しずつ軽くする手当てです。

予約をフォームで受けるまでの4ステップ

保護者からのフォーム申込と園にかかってきた電話の両方が、一枚の見学予定の一覧表に集まる流れを示した図
電話をなくす必要はありません。フォームでも電話でも、行き先を一覧表ひとつにそろえるのがねらいです。

順番に組み立てていきます。1日で全部やらなくて大丈夫です。

①見学枠を決める。 ここがいちばん効きます。「いつでもどうぞ」にしていると、毎回ゼロから調整が始まります。そうではなく、曜日と時間帯を園の側から先に決めてしまう。たとえば「火曜・木曜の10時30分から」「1枠につき3組まで」「所要30分」。子どもの活動が落ち着いていて、園の様子も見てもらいやすい時間を、園長・主任と相談して2枠ほど置いてみてください。枠が決まった時点で、調整の往復はほとんど消えます。

②フォームを作る。 無料で使えるフォーム作成サービス(Googleフォーム、Microsoft Forms など)で十分です。園でICTシステムや公式LINEを使っているなら、その中の予約・アンケート機能でもかまいません。項目は少ないほど、保護者も入力しやすくなります。

選択式にできるところは選択式にします。希望日をカレンダーの手入力にすると、園が開いていない日が届いてしまい、結局こちらから連絡することになります。あらかじめ決めた枠だけを選択肢に並べるのがコツです。

フォームの最後には「いただいた情報は見学のご案内にのみ使用します」という一文を添えておきます。取得する情報は最小限に、保存先とアクセスできる職員も決めておくと安心です。園の考え方は 園の個人情報の保管・共有ルールを整える基本 にまとめてあります。

③導線を置く。 作っただけでは使われません。保護者が最初にたどり着く場所に置きます。園のホームページの見学案内ページ、自治体の園紹介ページからのリンク、園の玄関や掲示板にQRコード。そして電話が鳴ったときは、「ホームページのフォームからでもお受けしています」と一言そえる。すぐには切り替わりませんが、次の方から少しずつ変わっていきます。

④一覧表に集める。 ここを飛ばすと効果が半分になります。フォームの回答はそのまま表計算シートにたまるものが多いので、それをそのまま見学予定の一覧表として使います。電話で受けた予約も、事務が同じ一覧表に手で入れる。共有カレンダーに入れる園なら、それでもかまいません。「見学の予定を知りたければ、ここを見ればいい」場所が1つある——これが、朝の慌ただしさをいちばん減らしてくれます。

前日と当日を、決めごとにしておく

予約が集まりはじめたら、当日の動きも軽く決めておきます。ここが決まっていないと、せっかくの仕組みが「予約は取れるけど毎回バタバタ」で終わってしまいます。

前日:一覧表を見て、翌日の見学を職員の朝の打ち合わせで共有します。人数、月齢、案内担当。園長・主任のどちらが対応するかも、ここで確定させます。

当日:お渡しする資料をセットにしておくと、受付が早くなります。園のパンフレット、年間行事の予定、給食の献立表の見本、入園申込のスケジュール。よく聞かれることをQ&Aの1枚にまとめておくと、案内する職員が変わっても伝わる内容がぶれません。

見学のあと:一覧表に「来られたかどうか」と、聞かれた内容を一行だけ残します。同じ質問が何度も出てくるようなら、それは園の案内資料に足すべき情報です。年度をまたいで見返すと、次の年の準備がぐっと楽になります。

なお、入園の可否や利用調整のことを聞かれる場面も出てきます。園として答えられる範囲と、市区町村の窓口にご案内する範囲は、あらかじめ線を引いておくと安心です。仕組みの整理は 保育園の利用調整・点数の仕組みと、園が押さえておく事務 を、申込から内定までの流れは 入園申込の受付から内定まで、事務フローを整理する をどうぞ。

そのままにすると、どうなるか

いま電話とメモで回せているなら、それ自体は悪いことではありません。ただ、この形は件数が増えたときと、担当者が休んだときに弱いという特徴があります。

見学の希望が重なる時期に、折り返しが一日延びる。その間に保護者は別の園を先に見に行かれるかもしれません。ダブルブッキングに気づかず当日を迎えて、案内する職員がいない。メモの電話番号が読み取れず、こちらから連絡できない——どれも、誰かの不注意ではなく、仕組みが手作業に頼りきっているときに自然に起きることです。

逆に言えば、枠とフォームと一覧表の3つがそろっていれば、忙しさのピークでも同じ品質で回せます。事務のあなたがいない日でも、園の誰かが一覧表を開けば答えられる。それは園の安心にもなります。

明日やること

まず、カレンダーを開いて、見学枠の候補を2つ書き出すところから始めましょう。「火曜10時30分」「木曜10時30分」のように、曜日と時刻だけで十分です。園長・主任に「この2枠でどうでしょう」と相談すれば、5分で決まります。

枠が決まったら、次はフォームです。項目は上に挙げた6つで足ります。無料のフォーム作成サービスなら、初めてでも30分ほどで形になります。完璧を目指さず、まず自分でテスト送信して、回答が表計算シートに並ぶところまで確認できれば、その日の作業は成功です。

ホームページへの掲載は、その次の日でかまいません。全部を今週中に終わらせなくて大丈夫です。枠を決めた時点で、いちばん重い部分はもう終わっています。

確認チェックリスト

フォームの利用にあたっては、園や法人でクラウドサービスの利用ルールが決まっていることがあります。導入の前に、法人の担当や園長に一度確認しておくと安心です。自治体によっては、園見学の受付方法を園紹介のページに掲載してくれる場合もあるので、更新の窓口もあわせて確かめておきましょう。

よければ、こちらも

見学から先の事務の流れは 入園申込の受付から内定まで、事務フローを整理する と 入園面接・健康診断で確認する書類と当日の段取り に続いています。見学で聞かれることの多い園のきまりは 重要事項説明書と入園のしおりを見直すときの確認項目 が土台です。フォームやアプリをもう少し広く使いたくなったら 書類づくりを少し楽にするICT化の始め方 と 保育ICTシステムの選び方:迷わないための比較ポイント、年間の予定に組み込むときは 保育園の年間事務カレンダー もあわせてどうぞ。

静かになった事務室で、壁に貼った見学予定の一覧表を見ながら、園長と並んでほっとほほえむ保育園の事務担当者

見学に来られる保護者は、その園に子どもを預ける未来を想像しながら足を運んでいます。その最初の一歩を受け取っているのが、電話を取っているあなたです。仕組みを整えるのは、対応を機械にまかせるためではありません。段取りに使っていた時間を、来てくれた人と話す時間に戻すためです。まずは枠を2つ決めるところから。それだけで、この秋の事務室は少し静かになります。

関連用語