朝の保育園の事務室で、電源の入らないパソコンの前に座り、少し不安そうに画面を見つめている事務担当者

保育園のデータのバックアップ|クラウド保存と「戻せる」備えの基本

朝、事務室のパソコンの電源を押しても、画面が暗いままだった。

そんな日を想像すると、少し背中が冷たくなりませんか。そのパソコンの中には、書きかけの児童票、今月の給付費請求の表、職員のシフト、去年の行事の写真。「あれ、これってどこかに控えがあったっけ」——考えはじめると、答えがすぐに出てこない。

これは、あなたの管理が甘いからではありません。園の仕事は毎日そこにあるパソコンで回っていて、「壊れたとき」のことを考える時間が、これまでなかっただけです。

結論:やることは3つです。①園のデータが今どこにあるかを書き出す、②「いつも使う保存場所」と「万一のための控え(バックアップ)」を別々に用意する、③控えから本当に戻せるかを、一度だけ試す。大事なのは高価な仕組みではなく、控えが「別の場所」に「もう1つ」あること。今日は①だけで十分です。

順番に見ていきましょう。

園のデータは、思ったより散らばっている

まず、今の園で起きていることを整理します。多くの園で、データは次のような場所に少しずつ分かれています。

どれも、その時々に「いちばん早い場所」を選んできた結果です。ただ、置き場所がばらばらだと、何が消えたら困るのか、そもそも何がどこにあるのかが見えにくくなります。

そしてもうひとつ、現場で迷いやすいのがここです。

「クラウドに入れているから大丈夫」は、半分だけ正しい

クラウド(インターネット上の保存場所。Googleドライブ、OneDriveなど)に保存しておくと、パソコンが壊れてもデータは残ります。これは大きな安心です。

ただ、パソコンとクラウドを同期(片方で変えると、もう片方も同じように変わる仕組み)させている場合、パソコンで間違って消したファイルは、クラウドからも同じように消えます。上書き保存で内容を消してしまったときも同じです。パソコンがウイルスに感染してファイルが開けなくなると、その状態のまま同期されてしまうこともあります。

つまり、同期は「いつも同じ状態にそろえる」仕組みで、「前の状態に戻す」仕組みとは別ものです。多くのクラウドサービスには「ゴミ箱」や「以前の版に戻す」機能がありますが、残る期間はサービスや契約ごとに決まっています。一度、園で使っているサービスの設定画面やヘルプで確かめておくと安心です。

守り方は「3つの置き場所」で考える

バックアップの考え方として広く使われているのが、「データを3つ持つ・2種類の場所に置く・1つは離れた場所に置く」という目安です。難しく聞こえますが、園に置きかえるとこうなります。

園のデータを3つの置き場所に分けた図。事務室のパソコンで作業する場面、インターネットの向こうの保存場所に預ける場面、鍵のかかる棚にしまった外付けの保存機器の場面
いつも使う場所、クラウドの保存場所、ふだんはつながない控え。3つあれば、どれか1つが困っても戻せます。
置き場所園での例役割
① いつもの場所事務室のパソコン、共有フォルダ毎日の作業をする場所
② クラウド法人・園のアカウントで契約したクラウドの共有ドライブパソコンが壊れても残る場所
③ 控え外付けのハードディスクなど。ふだんはパソコンにつながない消えた・壊れた・開けなくなったときに戻る場所

ポイントは③です。ふだんはつながないでおくことで、パソコン側で起きた削除やウイルスの影響を受けにくくなります。月に1回、決めた日にだけつないでコピーし、終わったら外して鍵のかかる棚にしまう。これだけで、守りがずいぶん変わります。

③をクラウドの別のサービスにする方法もあります。どちらでもかまいません。「①②とは別の場所に、もう1つ」になっていれば目安は満たせます。

手順を小さく分けます

ステップ1:データの置き場所を書き出す(30分)

紙1枚で大丈夫です。園で使っているデータを、置き場所ごとに書き出します。

書く項目例
データの種類児童票、給付費請求、シフト表、職員名簿、写真
今の置き場所事務パソコンのデスクトップ、USBメモリ、ICTシステム
消えたら困る度合い高・中・低
控えはあるかある(どこに)/ない

書き出すと、たいてい「高」なのに「控えなし」のものがいくつか見つかります。そこに丸をつけてください。そこが、最初に守るところです。

ステップ2:「いつもの保存場所」を園のアカウントにそろえる

個人のスマホや、職員が個人で契約したクラウドに園のデータが入っていると、その人が休んだり辞めたりしたときに取り出せなくなります。保存場所は、園や法人のアカウントで契約したものにそろえていきます。

書類ごとの保存年限は 保育園の文書保存年限一覧、見せる範囲の決め方は 保育園の個人情報、保管と共有のルールを整える基本 にまとめています。クラウドにログインするためのIDの管理は 保育園のパスワード管理 とあわせて進めると、置き場所とカギがそろいます。

ステップ3:「控え」を1つ用意して、日を決める

外付けのハードディスクを1台用意するなら、園の備品として購入し、台帳に載せるところまでやっておくと、あとで「誰のもの?」になりません。

「毎日やらなきゃ」と思わなくて大丈夫です。月1回でも、控えがまったくない状態とは比べものにならないほど安心が違います。

ステップ4:保育ICTシステムのデータを確認する

登降園や記録のシステムに入っているデータは、多くの場合、提供会社のサーバーに保存されています。園のパソコンが壊れても消えないのは心強い点です。ただ、次の2つは一度確かめておきましょう。

契約書や管理画面のヘルプに書かれていることが多いので、分からなければ提供会社のサポートに聞いてみてください。システムの選び方は 保育ICTシステムの比較、園に合うものの選び方 にまとめています。

ステップ5:「戻せるか」を一度だけ試す

ここは、ほかの記事ではあまり書かれないところですが、いちばん効きます。

控えを取っていても、いざというときに開けない・古いものしか入っていない、ということは起こります。 だから一度だけ、実際に戻してみます。

5分で終わります。「戻せた」を一度体験しておくと、本当に困った日に、落ち着いて手が動きます。

もし、困った日が来たら

パソコンが動かない、ファイルが開けない、画面に見慣れない警告が出た。そんなときは、次の順番を覚えておくと慌てずにすみます。

  1. そのパソコンをネットワークから外す(LANケーブルを抜く、Wi-Fiを切る)。ウイルスが疑われるときに、ほかへ広げないためです
  2. 控えのハードディスクは、つながない。控えまで影響を受けないようにします
  3. 園長と、法人のICT担当や契約している保守会社に連絡する
  4. 個人情報が含まれる場合の対応は、園や法人の決まりにそって進める

「自分で直さなきゃ」と抱え込まなくて大丈夫です。止めて、つながず、知らせる。ここまでできれば、事務としての初動は十分です。

明日やること

明日ひとつだけやるなら、「消えたらいちばん困るデータ」を3つ書き出して、それぞれ今どこにあるかを書くことです。

児童票、給付費の請求、職員の名簿——たぶん、すぐに浮かぶと思います。その横に「控え:ある/ない」を書く。「ない」がひとつでも見つかれば、それは今日いちばんの収穫です。そこから、月1回の控えの日を決めていけば大丈夫です。

チェックリスト(コピーして使えます)

置き場所を知る

いつもの保存場所

控え(バックアップ)

ICTシステム

戻せるか

夕方の保育園の事務室で、事務担当者が鍵のかかる棚に小さな保存機器をしまい、ほっとした笑顔を見せている場面

データの守りは、目に見えない仕事です。何も起きなければ、誰にも気づかれません。でも、何も起きない日を支えているのは、こういう小さな準備です。これまで一台のパソコンで園の事務を回してきたこと自体、あなたが園を支えてきた証だと思います。

完璧な仕組みはいりません。控えが、別の場所に、もう1つ。 そこからで大丈夫です。

よければ、こちらも

園のデータと書類まわりの記事を、いくつか置いています。

関連用語